「ナイスショットは、正しいグリップから生まれる」
これは、ゴルフ界で古くから言われている格言です。なぜなら、グリップはあなたの体とゴルフクラブをつなぐ唯一の接点であり、スイングのすべてを左右する最も重要な要素だからです。
ボールが右に曲がる「スライス」が止まらない…
思ったように飛距離が出ない…
日によって当たりが全然違う…
もしあなたがこんな悩みを抱えているなら、その原因は間違ったグリップにあるかもしれません。
この記事では、多くのゴルファーを指導してきたプロの視点から、3種類の正しいグリップの握り方を、それぞれのメリット・デメリットと共に徹底解説します。自分に合ったグリップを見つけることが、スコアアップへの一番の近道です。
なぜグリップはそんなに重要なのか?
スイングの他の部分を修正する前に、まずグリップを見直すべき理由は3つあります。
- フェースの向きを決めるから:クラブの面の向きは、ボールの飛び出す方向を直接決定します。グリップがずれていると、いくら正しくスイングしてもボールはまっすぐ飛びません。
- 力の伝達効率を決めるから:正しいグリップは、体の回転で生み出したパワーを無駄なくクラブヘッドに伝えます。間違った握り方は、パワーロスに直結します。
- スイングの再現性を高めるから:毎回同じように握れることで、スイングが安定し、ミスの幅が格段に少なくなります。
つまり、グリップはすべての基本。ここがしっかりしていなければ、安定したショットは望めないのです。
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グリップの基本① 左手の握り方【3種類共通のポイント】
まず、右利きの方を基準に、すべてのグリップで共通となる「左手」の正しい握り方から解説します。ここがすべての土台となります。
- 指の付け根で握る(フィンガーグリップ)
手のひら(パーム)でべったり握るのではなく、指の付け根のラインに沿ってクラブを握ります。これにより、手首を柔らかく使えるようになります。 - 生命線でフタをする
クラブを握った上から、親指の付け根のふくらみ(生命線あたり)で、親指にフタをするように被せます。これにより、クラブとの一体感が生まれます。 - 親指はセンターより少し右へ
親指はシャフトの真上ではなく、ほんの少しだけ右側に置きます(ショートサム)。これにより、トップでのクラブのグラつきを防ぎます。
【チェックポイント】正しく握れたら、クラブを地面と平行に持ち上げてみましょう。手首の力だけでクラブを支えられていればOKです。
グリップの基本② 3種類の右手(右手の重ね方)
左手の形ができたら、いよいよ右手を添えてグリップを完成させます。この右手の小指をどう処理するかで、グリップの種類が変わります。
1. オーバーラッピンググリップ【最も標準的】
右手の小指を、左手の人差し指と中指の間に乗せる(重ねる=Overlap)握り方です。世界のプロゴルファーの過半数が採用しており、最もオーソドックスなスタイルと言えます。
- メリット:右手を使いすぎにくく、体の回転を使ったスイングがしやすい。方向性が安定する。
- デメリット:指が短い人や力が弱い人は、両手の一体感が得にくい場合がある。
- こんな人におすすめ:成人男性ゴルファー全般、どのグリップから始めるか迷っている方。
2. インターロッキンググリップ【一体感重視】
右手の小指と左手の人差し指を絡める(Interlock)握り方です。タイガー・ウッズなど、多くのトッププロも採用しています。
- メリット:両手の一体感が非常に強く、グリップがズレにくい。手首の余計な動きを抑制できる。
- デメリット:指を痛めることがある。強く握りすぎてしまい、力みの原因になる場合も。
- こんな人におすすめ:手が小さい方、指が短い方、女性ゴルファー、どうしても手打ちが直らない方。
3. テンフィンガーグリップ(ベースボールグリップ)【飛距離重視】
10本の指すべてで、野球のバットのようにクラブを握るスタイルです。別名「ベースボールグリップ」とも呼ばれます。
- メリット:最も力が入りやすく、クラブヘッドを加速させやすい。非力な方でも飛距離アップが期待できる。
- デメリット:手首を使いやすいため、フェースの開閉が大きくなり、方向性が不安定になりやすい。
- こんな人におすすめ:ジュニアゴルファー、シニアゴルファー、筋力に自信のない女性。
意外と知らない「握る強さ(グリッププレッシャー)」の正解
正しい形を覚えても、握る力が強すぎては意味がありません。力みはスイングを硬くし、ヘッドスピードを落とす最大の敵です。
グリッププレッシャーの強さは、よく「ヒヨコを優しく包むように」「チューブから歯磨き粉が飛び出ない程度」と表現されます。
数字で表すなら、クラブがすっぽ抜けない程度の強さを1、最大筋力で握るのを10とすると、「3〜4」くらいの力加減が理想です。特にインパクトの瞬間に力が入らないように注意しましょう。
まとめ:自分に合ったグリップが「正解」です
3種類のグリップ、いかがでしたか?最後にそれぞれの特徴をまとめます。
グリップの種類 | 特徴 | おすすめな人 |
---|---|---|
オーバーラッピング | 方向性が安定しやすい最も標準的な握り方 | ほとんどの男性ゴルファー |
インターロッキング | 一体感が強く、手首の動きを抑制できる | 手が小さい方、女性ゴルファー |
テンフィンガー | 最も力が入りやすく、飛距離が出やすい | ジュニア、シニア、非力な方 |
プロの世界でもどのグリップが一番良いという結論は出ていません。つまり、あなた自身が一番しっくりきて、安定して振りやすいと感じるグリップが「正解」なのです。
練習場でこの3種類をすべて試し、自分の感覚を信じて最適なグリップを見つけてください。正しいグリップを身につけることが、あなたのゴルフを劇的に変える第一歩になるはずです。